人間失格
楽天ブックスで見る最初から最後まで重く沈んだ空気に包まれ、その空気ごと引き込まれる作品だった。
どんな本?
主人公・大庭葉蔵は、生まれながらに感受性の鋭い人物である。相手がどう振る舞えば喜ぶのか、言葉の本音はどこにあるのかがわかってしまう。それでも本心を表に出すことはなく、幼い頃から友人や恋人、家族に対してさえ「道化」を演じ続ける。その振る舞いが少しずつ心を蝕み、酒や色恋に溺れていく生涯が、本人の手記という形で綴られていく。
この本で得られるもの
- この小説のキーワードは「純粋であることの生きづらさ」なのではないか、という読み方
- 自分の意見や意思を押し殺した経験は、大小の差はあれ誰にでもあるのではないか、と自分に引き寄せて考えるきっかけ
- 主人公をおかしな人と片づけられない、共感できる部分があるという読書体験
こんな人におすすめ
- 人に合わせすぎて、本音を言えずに疲れてしまった経験がある人
- これまで小説をあまり読んでこなかったけれど、名作に一度触れてみたい人
読んでみて
読んでいて一番印象に残ったのは、ある出来事に対して葉蔵が抱いたのが、怒りや嫉妬ではなく「純粋さが穢されたこと」へのショックだった場面だ。自分には純粋でいることができなかったけれど、人には失ってほしくない。そんな気持ちが葉蔵にはあったのだろうか。太宰自身の体験が下敷きになっているという話もあり、繊細な心理が痛いほど伝わってくる一冊だと感じた。僕はこれまで小説にあまり興味がなかったが、これを機に視野を広げてみたいと思う。