同志少女よ、敵を撃て
楽天ブックスで見る独ソ戦の悲惨さと、人は簡単に狂気へ傾きうるということを感じる一冊だ。
どんな本?
舞台は第二次世界大戦の独ソ戦。ソ連の小さな村で母と狩猟をして暮らしていた少女セラフィマは、ドイツ兵による村の虐殺で、母を含む日常のすべてを失う。窮地を救った赤軍の兵士イリーナに生きるか死ぬかの選択を迫られた彼女は、憎しみを支えに狙撃兵として生きることを誓う。訓練を経て、彼女は激戦の地スターリングラードへと向かっていく。
この本で得られるもの
- 独ソ戦は「説得」ではなく、互いの思想に基づく「殲滅」を目的とした戦争で、民間人も多く巻き込まれたという背景
- 人を殺すことへのためらいが、いつしか「数」として誇るものへ変わっていく過程から、倫理観は環境によって簡単に変わってしまう脆いものだという実感
- 最初はためらっていたことが、集団の空気や罰がないことで当たり前になっていく。その心理は、平和な日常の中にも小さく存在するのではないかという気づき
こんな人におすすめ
- 戦争を、歴史の知識としてではなく一人の人間の目線から感じてみたい人
- 読み応えのある長編小説にじっくり浸りたい人
読んでみて
ここまで極端ではないにしても、セラフィマの心の変化にはどこか共感できる部分があると感じた。最初はためらっていたことが、環境によっていつのまにか当たり前になってしまった経験は、誰にでもあるのではないだろうか。今という平和な立場からなら、殺人は倫理に反すると簡単に整理できる。でも、生きるか死ぬかの環境で同じ倫理を保ち続けることはできないのだと思う。この本をきっかけに、戦争にも少し興味を広げてみたい。
単行本も出ているが、僕が読んだハヤカワ文庫版を紹介している。